浮気現場の写真撮影って、プライバシーの侵害に当たらないの?
探偵の業務は基本、「尾行」「張り込み」「聞き込み」がありますが、調査方法によっては、本当にやってもいい業務なのか、プライバシーの侵害に値するのではないかと思う人も多いのではないでしょうか。
探偵が通常行っている業務は違法ではないのか?違法に当たる探偵業務とはなにかを解説していきます。
そもそも、プライバシーの侵害ってなに?
「プライバシーの侵害で訴える」などといいますが、厳密にいうと「プライバシーの侵害」という名前の法律はありません。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法 第13条 引用元:電子政府の総合窓口e-Gav
日本国憲法13条では、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が規定され、「幸福追求権」とも呼ばれています。これは「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という内容があります。
難しい言葉で書かれていますが、憲法が公布された1946年から現在に至るまでに色々な技術が発達し、様々な問題が引き起こされ始めました。時代の流れとともに、裁判所ではこの日本国憲法13条を根拠に「新しい人権」が認められてきました。
プライバシー権、肖像権、アクセス権、自己決定権、環境権などがありますが、最高裁で認められているものはプライバシー権と肖像権です。
プライバシー権は、定義上「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」とされています。
また、探偵業法第6条には「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。」とあり、探偵の調査も十分に気をつけて行わないと違法行為とみなされます。
探偵の浮気調査は、プライバシーの侵害?
探偵の浮気調査は正当な調査?
探偵による浮気調査は、プライバシーの侵害ではないかと思われがちですが、すべての調査がそうではありません。
探偵業法第2条「探偵業務とは、他人の依頼を受けて特定人の所在又は行動についての情報であって、当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞き込み、尾行、張り込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」とあり、「聞き込み」「尾行」「張り込み」などは探偵業法で認められています。
また、浮気調査の正当性という意味では、そもそも不倫や浮気というのは、法律用語でいう「不貞行為」に当たります。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法 第770条 引用元:電子政府の総合窓口e-Gav
浮気調査は配偶者の不貞行為を調査するため、また、慰謝料請求や離婚調停に使用するためという正当な理由があるため、探偵が調査することは違法行為とはなりません。
浮気調査が違法調査となるケース
浮気調査には正当性があるとはいえ、調査内容によっては違法調査となります。浮気調査における違法に当たる調査方法としては、以下のようなものがあります。
- オートロックのマンションに侵入して部屋番号を確認
- 電話の盗聴
- 別れさせ屋
- GPSを無断でとりつける
- 仕返し、復しゅう
浮気調査を依頼する場合は、探偵が上記の違法行為をしていると、裁判で証拠として認めなれなくなる場合もありますので、注意が必要です。また、依頼者が配偶者のメールのパスワードを解析してパスワードを取得し、勝手にメールの中身を読むことは「不正アクセス禁止法違反」に該当します。
さらに配偶者のスマホなどに無断で遠隔操作アプリなどをインストールする行為は「不正指令電磁的記録供用罪」となり、立派な犯罪行為となります。
探偵だけでなく、依頼する側(がわ)も違法行為をしないように気をつける必要があります。
実際にあった探偵によるプライバシーの侵害
上記で浮気調査が違法となるケースを上げましたが、実際にプライバシーの侵害が認められた事件を紹介します。
2006年、京都のある探偵社が浮気調査を依頼され、ターゲット女性のマンション自室近くの配電盤にビデオカメラを遠隔操作で撮影できるように設置し、3日間にわたり出入りする人物を撮影したことで、女性側が精神的苦痛を受けたとして慰謝料などを請求した裁判で裁判官は「女性のプライバシーの侵害は明らか」と指摘し、探偵業者に50万円の支払いを命じました。
通常は、浮気の証拠としてホテル前などでの写真撮影が一般的ですが、この探偵業者はマンションに侵入した上、無断でビデオカメラを配電盤に設置し、3日間にもわたって撮影し続けたことはやり過ぎだと判断されたと思われます。
探偵の隠し撮りによるプライバシーの侵害を認めた裁判は珍しく、探偵の行き過ぎた調査方法を今一度見直す必要があるのかもしれません。
探偵がしてはいけない調査方法
浮気調査にかかわるもの以外にも、探偵が違法に当たる調査があります。
- 電話番号や携帯番号から個人の特定
- ナンバープレートから個人の特定
- 預金口座・ローン残高の調査
- 出身地・出生に関する調査
- 別れさせ、復縁、退職に追い込むなどの工作行為
- 犯歴、戸籍謄本、住民票の入手
- ストーカー目的の調査
- DVや虐待目的の調査
上記のような違法調査を行うことを堂々と明記した探偵事務所は存在します。違法調査には、法外な値段が請求される可能性もありますので、注意が必要です。
探偵とプライバシーの侵害まとめ
・プライバシーの侵害は、憲法で認められた新しい人権
・探偵の通常の調査では浮気調査はプライバシーの侵害にならないが、やり過ぎた調査はプライバシーの侵害になる可能性がある
・探偵には色々な違法調査があり、実際に行っている探偵もいるため注意が必要
プライバシーの侵害は、色々な解釈ができる難しい法律です。探偵業務は、プライバシーの侵害にならない範囲で調査しなければなりません。自分が依頼するときは、プライバシーの侵害はもとより、違法調査を行わない探偵事務所を選ぶことをおすすめします。
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